幼なじみは年の差7歳【完全版】
――……。
ナイフが、勢いよく振り下ろされた。
はずだった。
「もうやめなよ、先輩」
知っている声。
その声の主と、もう一人。
俺の知る二人が部屋に入ってきたのは、ナイフが高く振り上げられた直後だった。
「良明…」
彼女にすぐさま近づいた彼、良明くんがナイフを持つ手を制止した。
ナイフは、まだ振り下ろそうとする力と制止する力で小刻みに震えている。
「もういいだろ、愛子。
もう終わりにしよう」
時間をかけながらナイフを手から抜き取り、誰も居ない場所へと投げ捨てた。
「…良明は、私の味方だと思っていたのに」
崩れる彼女の体を支えながら良明くんは言った。
どこか、寂しそうな顔をしながら。
「…俺も、愛子の味方で居たかったよ」
二人の会話を聞く麻実は無言のままそれを見、それからテーブルに置いてあった鍵で手錠を外してくれた。
「ごめん、助かったよ」
「…ん、二人とも無事で良かった」
どこか寂しそうに笑う麻実はそのまま美和に近づいて、優しく頭を撫でた。
「美和、私たちが来たからもう大丈夫だよ」
「麻実ちゃん…」
その時、美和の瞳から涙がこぼれ落ちた。