幼なじみは年の差7歳【完全版】
「…何言ってるのよ。
こんなことされて、あんたは許せるの?
良明はいっぱい傷を作って、あんただって髪をやられただけじゃなくて、殺されそうになったんだよ?」
麻実が必死に言うけれど、美和は彼女を見てから言う。
「もういいんだよ」
「いいって、何がいいのよ?こんな奴を野放しにしておくの?」
…麻実の言ってることは正しい。
だけど美和は首を横に振る。
「もういいの」
「…ねぇ、じゃあ怪我した良明はどうなるの?
彼女だけじゃなくて、良明に怪我をさせた奴らも放っておくの?」
「それ、は…」
困ったように視線を泳がせる美和。辿り着いた先に居る良明くんは俺を見た。
「…冬馬さん、ちょっといい?」
「ん」
虚ろな目をする九条さんを連れ、別室へと移動する。
そこで良明くんは静かに話し出す。
「すみません、麻実が居るとゴチャゴチャうるさいんで。
とりあえず知り合いの警察官に話します。だけど多分、先輩は逮捕にならないと思う。
先輩は良いとこのお嬢様だし…このことは公表したくないと思うから」
…彼女の両親はきっとそうする。と良明くんは言う。
つまり、示談しろということだ。
「実際、先輩は美和ちゃんを連れてこいって指示しただけで、俺を殴ったのは奴らの勝手な判断。
そうでしょ?先輩」
「…えぇ。私はあの子と話したかっただけ。
良明に怪我をさせたなんて、聞いてない」
いつの間にか俺を見ていた九条さんが疲れたような顔でため息をついた。
正気に戻っている…と思っていいのか?
「…ごめんなさい。本当にただ話したかっただけなの。
あんなことするつもりじゃなかったのに、冬馬さんがずっとあの子を見てるから…あの子のことばかり話すから…」
彼女の中で何かが弾けた。だからこんなことになった。
…彼女の言葉を信じるならば、だけど。