幼なじみは年の差7歳【完全版】
「麻実が好きだ」
図書館まであと少し。
歩き続けながら麻実に言う。
「それは前に聞いた」
「…なんだよ…もう少し、喜ぶとかなんかあるだろ」
いつもと変わらない麻実が、呆れたように言う。
「どうして わ た し が 喜んであげなきゃいけないの?」
「…あぁ、そうですね…」
…いつも以上に冷たいかもしれない。
だけど言葉を続けるしかない。
「…俺な、お前が泣いてるところなんてもう見たくないんだ。
前に、そんな顔させたのは俺だけど…もうそんな顔させたくない。
俺の隣に居る時も、居ない時も…お前にはずっと笑顔で居てほしい」
俺の気持ちを、全てを言葉に託す。
なのにこいつは…、
「ずっと笑顔で居たら気持ち悪くない?
笑ってるお面一日中つけてるみたい」
…なんでこう、ムードのカケラも無いんだ。
いや、歩きながら話してる俺も俺だけどさ。
「でも、ありがとね」
………。
そう言った麻実は立ち止まり、照れたように笑う。
それから少し背伸びをして俺の頭に手を置いた。
「私も良明が好き。
だから多分、ずっと笑顔で居られるよ」
髪を撫でる麻実はやっぱり照れたように笑い、俺は何も言えず視線を逸らすだけだった。
(…ヤバい。撫でられるのヤバい…)
美和ちゃんに撫でられた時とは違う感じ…一言では、言えない…。
恥ずかしいは恥ずかしいけれど、そんな一言では片付けられない。
心臓が有り得ないくらいにドキドキしてて、なんも出来なくなる。
「…とりあえず図書館行かないと時間ヤバくない?」
「あー…別に今日じゃなくても」
「いや、俺がヤバい」
こんな状態で二人で居るなんてヤバい。
図書館…とにかく人の居るところに行きたい。
「あ、もしかして照れてる?」
…とにかく今は何も言わず、麻実の手を引いて歩き出す。