幼なじみは年の差7歳【完全版】


………。
車が見えなくなるまで見送り、冬馬兄ちゃんの家の玄関を開く。
…掃除を任された家は、いつもと変わらない姿で私を迎えてくれる。

二人で過ごした部屋は何一つ変わらない。
唯一変わったのは、冬馬兄ちゃんの部屋…。


空っぽの本棚と、仕事をしていた机、ゴミ箱…そしてベッド。
ベッドに横になると、冬馬兄ちゃんの匂いがした。

主にタバコの匂い。あとはよくわからないけれど、“コレが冬馬兄ちゃんなんだ”とわかる匂い。


「…離れたばっかりなのに、もう会いたい」


ぬくもりなんてあるわけが無い冷たい布団。
自分一人しか居ない広い部屋。何も無い部屋。


「会いたいよ…」


流れる涙、止められない寂しさ…。

でも、
越えていかなきゃいけない。


冬馬兄ちゃんに心配はかけたくないし、弱い自分を見せて迷惑もかけたくない。


(…笑顔で、過ごしていこう)


今日、ここで泣いた後は…笑顔で生活しよう。
笑って麻実ちゃんや良明くんと話そう。

冬馬兄ちゃんに心配や迷惑をかけない為に、笑おう。


「…私は大丈夫」


いつかに言った言葉を、その場で繰り返した。




.
< 253 / 278 >

この作品をシェア

pagetop