幼なじみは年の差7歳【完全版】
………。
車が見えなくなるまで見送り、冬馬兄ちゃんの家の玄関を開く。
…掃除を任された家は、いつもと変わらない姿で私を迎えてくれる。
二人で過ごした部屋は何一つ変わらない。
唯一変わったのは、冬馬兄ちゃんの部屋…。
空っぽの本棚と、仕事をしていた机、ゴミ箱…そしてベッド。
ベッドに横になると、冬馬兄ちゃんの匂いがした。
主にタバコの匂い。あとはよくわからないけれど、“コレが冬馬兄ちゃんなんだ”とわかる匂い。
「…離れたばっかりなのに、もう会いたい」
ぬくもりなんてあるわけが無い冷たい布団。
自分一人しか居ない広い部屋。何も無い部屋。
「会いたいよ…」
流れる涙、止められない寂しさ…。
でも、
越えていかなきゃいけない。
冬馬兄ちゃんに心配はかけたくないし、弱い自分を見せて迷惑もかけたくない。
(…笑顔で、過ごしていこう)
今日、ここで泣いた後は…笑顔で生活しよう。
笑って麻実ちゃんや良明くんと話そう。
冬馬兄ちゃんに心配や迷惑をかけない為に、笑おう。
「…私は大丈夫」
いつかに言った言葉を、その場で繰り返した。
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