幼なじみは年の差7歳【完全版】
まさか冬馬兄ちゃんのお父さんと並んで歩くことになるなんて…。
「家の掃除、いつもしてくれてたんだってね。ありがとう」
「…いえ、好きでやっていたので…」
「でも助かったよ」
お父さんは「これからは僕が月20万くらい払うよ」と笑ったけれど、全力で断った。
「…僕は海外への長期出張ばかりでなかなか家に戻れない。
これから先も美和ちゃんが家の手伝いをしてくれたら嬉しい。
あいつに任せたら汚れる一方だ」
「あ、はい勿論…って、冬馬…さんはもうずっとこの町に…?」
「来年からまたこっちだって」
そっか…来年、仕事を終えて戻ってくるんだ。
じゃあ今日はなんで戻ってきたんだろう?
それを問おうとした時、お父さんが先に話し出す。
「あいつ美和ちゃんと会いたかったらしいよ。
戻れるってわかったその日から、我慢出来なかったんだって」
そして、微笑みながら言葉を続ける。
「良いねぇ、青春だ。
僕も良い人と出逢いたいよ」
どこか羨ましそうに私を見るお父さん。
そんな顔に、上手く返事が出来なくて下を向いた。
「さて、コンビニに着いたわけだけど…やっぱりどこかで食べてこようと思う。
今日中には帰る。と、あいつに伝えてくれるかな?」
「あっ…はい」
お父さんが、私の為に時間をくれた。冬馬兄ちゃんと二人で話す時間を。
「ありがとうございます」
深く深く頭を下げて、コンビニ前でお父さんと別れた。