幼なじみは年の差7歳【完全版】
今日、麻実ちゃんと良明くんが家に来てくれることになっていた。
「引っ越し完了おめでとうパーティー」と変なネーミングをつけたのは良明くんだ。
…旅館の仕事が忙しい中、私たちの為に来てくれる。
それが何より嬉しかった。
「美和、来たよー」
「麻実ちゃん!」
玄関に荷物を下ろした時、麻実ちゃんがドアを開けた。
「遠いのにごめんね」
「いーのいーの。モトは良明がやろうって言い出したことだしね。
あ、その良明はまだ仕事中」
「そっかぁ。でも来るんだよね?」
「うん、終わったら超特急で来るって」
麻実ちゃんは笑い、ダンボールの一つを手に取る。
「もう運んじゃっていいんだよね?」
「うん、ごめんね」
「いーのいーの。私らの中でしょ」
相変わらず元気でやってるみたい、と少し話しただけでもわかる。
良明くんとも上手くやってるみたいだ。
「ところで、」
「ん?」
だけど、少し緊張したように笑う。
「今日、冬馬さんのお父さんも居るんだよね?」
「あ…うん」
そうだ、冬馬兄ちゃんのお父さん…麻実ちゃんのお母さんの、前夫…。
冬馬兄ちゃんはお母さんと和解して、麻実ちゃんとも普通に話してる。
だけど麻実ちゃんは…冬馬兄ちゃんのお父さんと話したことが無い。
私たちの結婚式で会ってはいるけれど、その時の麻実ちゃんは“新婦の親友”って扱い以外は無かった。
「血の繋がりは無い、まるっきり赤の他人だけど…私と会ったら、嫌な気分にさせちゃうかなぁって思ってさ」
家まで30秒の距離だけど、私たちは荷物を持ったまま立ち止まっていた。