幼なじみは年の差7歳【完全版】
車を止めた冬馬兄ちゃんの手は少しだけ熱くて、強く私のことを掴んでる。
「…美和は、魅力のある女性だから…自分が劣ってるとか、そんな風に考えちゃダメだよ」
予想していなかった冬馬兄ちゃんの言葉。私に向かって放たれた言葉。
…魅力のある女性…。
そんなことを言われたのは初めてだ。
私は冬馬兄ちゃんに子供扱いされていて、ずっと妹みたいな存在だと思っていたから…。
でも、冬馬兄ちゃんは私のことを…“女性”として見てくれてる。
「…言いたいことはそれだけ。
あの、これ持っていきな?
麻実ちゃんにも…渡せば喜ぶと思う」
「あ…」
後部座席から取り出したビニール袋。その中には確かに山のようにある【試供品】のメイク落とし。
それを押し付けられる。
「…明日、学校まで送ってやるから」
「…ん」
私の頭を撫でるその手はやっぱり熱くて…だけどやっぱり落ち着く。
「ごめんね、迷惑かけちゃって。
明日はよろしく!」
「あ、あぁ…勿論」
冬馬兄ちゃんは何か言いたそうにしたけれど、私は急いで車を降りてドアを閉めた。
これ以上冬馬兄ちゃんと居たら私…気持ちが抑えられなくなる。
(やっぱり好き。でも――)
――でも、今はまだ言えない。
「ありがとね。麻実ちゃんにも必ず渡すから」
窓を開けた冬馬兄ちゃんに笑顔を見せて、私は振り返らず家に入った。