幼なじみは年の差7歳【完全版】
「好きじゃなければ一緒に居ない」
「………」
…その言葉は、恋愛対象としてじゃなくて、幼なじみだからの言葉。
妹みたいな存在…家族としての、言葉…。
「私も嫌いじゃないよ」
精一杯の強がり。そんな風に笑うことしか出来なかった。
「…美和」
冬馬兄ちゃんはゆっくりと立ち上がり、私の後ろに回り込む。
そしてそのまま…強く抱き締められた。
「いつも、言わなきゃって思ってた。
でも、美和を前にしたら上手く言えなくて…ずっと困らせてきたってことを、知ってる」
背中に感じる冬馬兄ちゃんの体温。耳に吹きかけられる息。
頭がクラクラするような、セリフ…。
今、聞いてる“これ”は…冬馬兄ちゃんの本音、なんだよね…?
「幼なじみとして以上に俺は、美和が好きだ」
その言葉は、ホンモノ――?
「…だけど、ごめん。
付き合うとかそういうのは、出来ない」
…冬馬兄ちゃんの言葉が、静かに私の体に突き刺さる。
幼なじみ以上に好き。でも付き合うことは出来ない。
恋人同士になることは、出来ない…。
「…そっか」
どうしてダメなのか、理由を聞くことはしなかった。
冬馬兄ちゃんの言葉、想いはきっと、変わることはない。
「ごめんね、急に変なこと言っちゃって」
冬馬兄ちゃんの腕から抜け出すために立ち上がり、空になったお皿を運ぶ。
「洗い物は私がするね」
振り返り、冬馬兄ちゃんを見て笑った。