幼なじみは年の差7歳【完全版】
6、傷
【冬馬side】
――……。
いつまでも眠ったままの美和。
それを見つめながら小さなため息。
美和は、見通しの悪い道に入った途端に車と接触した。
幸いその通りは狭く、車のスピードがそれほど出ていなかった為に助かった。
傷は浅いものばかりだけど、いまだに眠っている。
「冬馬くん、入院の準備してくるね。
その間、美和をお願いしてもいいかしら?」
「あ…はい」
連絡を受け慌ててやって来た美和のお母さん。
初めは混乱していたようだけど、医師から説明を受けているうちに落ち着きを取り戻したみたいだ。
それでも、疲れたように笑うその顔にズキリと胸が痛む。
全て、俺のせい。
俺は美和を見ていた。車と接触して、跳ばされる美和を見ていた。
ずっと一番近くに居たはずなのに、
大切なその時に守ってやることが出来なかった。
「…冬馬さん」
ゆっくりとドアが開き、そして、ツラそうな顔をする良明くんが近づく。
「美和ちゃんは…まだ目を覚ましませんか?」
「…うん。脳にも異常は無かったんだけどね」
脳に異常は無い。傷も浅い。
なのに目を覚まさない。
「今は経過を見るしかないよ。
傷は浅いから、きっとすぐに目を覚ます」
そう笑ってみせるけれど、良明くんは下を向いて何も言わない。
多分、俺と同じように感じているんだ。
――このまま目を覚まさなかったらどうしよう?
…そんな不安ばかりが頭に浮かんでいるんだと思う。
「良明くん、少し話そうか。
こんな時だけど、キミには知っておいて欲しい」
「…あいつとの、麻実との関係ですか?」
「そう。俺と麻実の関係」
眠ったままの美和。そこに寄る良明くんを椅子に座るよう促し、少しだけ距離を取る。
ずっと美和に言おうと思っていたことを、目の前に居る良明くんへと話す。
良明くんは、美和にとって大切な人。そして俺たちにとっても大切な人。
そんな風に思えた。