依存~愛しいキミの手~
焼き肉屋を出て時計を見ると9時半。


「カラオケでも行こっか!」


美香が言うので、私は笑って頷いた。


やった、まだ一緒にいられる。


「あ…ちょ、ごめん客から電話。先行ってて!」


圭介が私たちから離れて電話を始めた。


昨日もさっきギチョウにいた時も、ちょこちょこお客さんから電話やメールが来て忙しそうだったなぁ。


「ねえ優、ホストって休日ないんだね?」


カジノの横に立ち止まって電話する圭介を振り返り行った。


「え?」


「だって今日お店休みなのに、優も圭介もお客さんと電話したりメールしたり、プライベートの休みがない感じじゃん?」


手を耳に当てて電話する仕草をして優に言った。


「まぁなー…売れれば売れるだけ、プライベートはなくなるよ。でも、そうやって繋いでないと客なんてすぐ切れちゃうからな。美香もあすかも、そのうち営業で忙しくなるよ」


優が笑って言った。


そんな忙しくなるなんて、この時は全く想像がつかなかった。


「あ、ここ!」


通り過ぎそうなことに気がついて、私が足を止めて言った。


「俺そこでタバコ買ってくるよ。あすか美香と同じだよな?」


優が斜め向かいのコンビニを指差しながら言った。


「うん、ありがとう。じゃあここで待ってるね」


そう言って美香と入口の横でタバコを吸って待った。
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