依存~愛しいキミの手~
圭介が膝に置いた手に持つ、タバコの煙りを見つめている。


?


なんか雰囲気が違う…?


そう思った直後、顔を上げた圭介は、普段通りの笑顔だった。


「オヤジな大学病院の医者なんだ。で、お袋はアパレルの会社経営。だから普通よりは金持ちらしいよ」


らしいよ…?


圭介がタバコの煙りを吐き出した。


「で、6つ上に兄貴いんだけど、そいつも医大通ってるらしい」


そいつ…?らしい…?


圭介の言葉の端々に、家族しゃなく他人のような言い方が含まれているような…。


「俺だけ道外れて中卒のホスト(笑)」


「家族と仲悪いの…?」


笑う圭介に聞いた。


圭介は一瞬止まった後、タバコを深く吸い込み灰皿にこすりつける。


「悪い悪くないの前に、めったに顔合わせねーかな…。お袋とは普通だけど」


そう言って、灰皿から煙りが立ち上るのも気にせず新しいタバコに火をつけた。

「小さい時から?」


私が言葉を返さないと思ったのか、圭介の目が一瞬丸く開いた。


すぐに目を伏せ、少しの間の後


「いや…年少入ってから…」


そう静かな口調で答えた。


これ以上聞いたらいけない。


そう直感した。
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