依存~愛しいキミの手~
「やる気がないなら帰らせるけど、やる気がないわけじゃないのは伝わってるから。気持ちの切り替えを上手くできるようにならないと、売上は上がらないよ。今日初めてこういうことが起こったけど、これからもたくさんあるから。接客に失敗したからって引きずったまま次のお客様に行くことも失礼だしね」


イッシーの言ってることは本当にその通りだ…。


私はイッシーの厳しい目から逃れるように、灰皿に視線を落とす。


「…厳しいこと言うのは、あすかちゃんが頑張れば必ず売れるって俺は思ってるからだよ」


え…?


思わず顔を上げると、イッシーは目を細めた。


「絶対に売れる。あすかちゃんの持つ、柔らかい雰囲気とか仕草は必ずお客様を掴む武器になる…っとごめん」


イッシーがインカムで何か話し始めた。


柔らかい雰囲気…?そんな物持ってないよ…?


「あすかちゃんフロア戻れる?」


「え?」


「中野様が指名で来てくれたよ。切り替えできないならフロアに戻すことはできないけど」


中野さんが…。


私は目をつむりタバコを吸い込んだ。


久しぶりに面白いと思えることに出会った。
知美みたいにキラキラ輝いてみたい。
期待してくれてるイッシーにも答えたい。


昨日の今日で会いに来てくれた中野さんに笑顔で帰ってもらいたい…。


よしっ!


私の目を見たイッシーが、それでいいって言っているような笑顔を向け頷いた。
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