依存~愛しいキミの手~
「お前は昨日ので平気?」


圭介がベッドに畳まれたままのスウェットを指差し言う。


指先につられるように視線をずらし私も頷いた。


「イベントどーする?七夕だから浴衣と笹?」


優がペンで頭をかきながら言う。


「浴衣色揃える?」


圭介もテーブルに肘をつき、シャーペンを回した。


2人の間に置かれるノートの表紙には『'99イベントノート』と書いてあった。


見せてもらうと、最初のページに年間の予定が書いてあった。ページをめくると色々なイベント企画と、売上目標、売上金額、反省点など書かれていた。


『圭介バースデー』


そう言う見出しを見つけた。


「圭介って誕生日4月なの?」


私がノートを見ながら聞くと、圭介もノートを覗き込む。


「おー懐かしい。俺4月15が誕生日。お前は?」


ノートに視線を落とし、目を細めながら言った。


「私5月5日男の子の日生まれ(笑)」


私もノートを見ながら笑う。


ノートの上に置かれた細く長い圭介の指。


薬指の年少リング。


ノートに書かれた圭介のバースデー売上。


桁が間違えてるんじゃないか!?と二度見したくらい。


…これだけ売上てるってことは、給料もそれなりにあるはず…。


それなのに、手に彫った墨を消しにいかないのはなぜだろう…。


私が最初に気づいた時、隠すような仕草をした。きっとあまり見られたくはないんだろう。


それなら、レーザーで消してしまえばいい話。


だけど、それをしない…。


それは、もしかして…。
< 189 / 441 >

この作品をシェア

pagetop