依存~愛しいキミの手~
8月上旬、知美のバースデーイベントが行われた。


イッシーにお願いして、途中で美香と店を抜けて知美の店へ行く。


エレベーターを降りて固まった。


エレベーターホールに、ずらーっと並ぶスタンドの花。


お店に入れない人が待ちの列を作る。


知美の人気を物語っていた。


店内に入ってもそれは同じで、廊下だけじゃなくフロアにまでお祝いの花やバルーンが飾られている。


「あすか、美香こっち」


そう呼んでくれたのは知美の店の店長だった。


席を用意してくれ、30分ほどしかいなかったが高級シャンパンやブランデーが色々な席でおろされていた。


「わざわざ来てくれてありがとう!」


そう言いながら現れた知美は、着物に身をつつみいつもの何倍も輝いていた。


これがバースデーイベントなんだ…。


浴びるほど飲んでいるはずなのに、全く普通の知美に驚いた。


「すっごい盛り上がってるね!」


美香が周りを見渡して言った。


「初めてのバースデーだったから、お客さん来るかなとかすごい不安だったけど何とか成功しそうで本当に良かった」


そう安心するように笑う知美は、数日前に会った時とは別人のようだった。


バースデー前はみんな病むと言うけれど、それを目の前で見てかける言葉が見つからないほど空気が張り詰めていたから。


ドンペリを入れ、少ししてからお店に戻った。


知美すごかった…。


私もあんな風になりたい。知美に近づきたい。


そう心の中で小さな闘争心が湧きだした。
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