依存~愛しいキミの手~

優しい目

カチャン


ジッポを開く音が暗闇に響く。


圭介が片手でジッポを開けながら火をつけるのが好きだった。


私もつけ方を教えてもらったけど、いまだにうまくつけることは出来ない。


私もタバコに火をつける。


タバコの煙と自分の吐く白い息が暗い空に消えていった。


「腹減ったな」


圭介が煙を吐き出してから、ゆっくり私を見て笑った。


クイーンズで夕飯を食べ、臨港パークへ行った。


暗く人がまばらに座る海沿いを、手をつなぎながら歩く。


段になっている所に腰かけ、遠くで動く船とベイブリッジを眺めた。


私はコートの袖の中に手を引っ込め、口に当て、コートの中に温かい息を吐き込んだ。


「ははっ、お前それ癖だよな?」


「えっ!?」


私が思わずコートを口から離した。


「お前カーデになった時からそれやってるよ」


そう優しく笑い、圭介の手が私の頬に触れた。


冬の海風に当たり、冷たい圭介の手がなぜか暖かく感じる…。


胸の奥が熱くなり、心臓が大きく動き出す。


思わず下を向いた。


「また…(笑)」


圭介が笑ったのが聞こえた。


頬に触れる圭介の手。


その手が少しずれて、私の髪を耳にかける。


くすぐったい感触と、恥ずかしい気持ちが入り混じってますます顔が上げられなくなった。
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