依存~愛しいキミの手~
緒方さんの言う通り、関内の店は福富町の店に比べて箱の広さは倍以上あり、キャストもスタッフも教育が行き届いている。


A店を思い出すような活気溢れる雰囲気だった。


「初めまして」


カウンターで座って店内を眺めていた時、着物を着た綺麗な40代くらいの女の人が隣に座り名刺を差し出してくれた。


名刺を見なくてもママと言うのが分かるくらい、貫禄溢れる人だった。


「歌舞伎町のA店で経験あるのよね?」


受け取った名刺を閉まっていると、ママが優しく笑った。


その笑った雰囲気がどことなく知美に似ていて、安心感を覚える。


「A店で経験があって、お客様も引っ張ってこれるなら、緒方さんの口添えだし時給はこのくらい出せるけどどうかな?」


提示された額は、福富町の店の倍。その当時の横浜の時給ではかなりいい方の額だった。


お店の雰囲気も気に入ったし、福富町の店では感じなかったワクワクした気持ちが胸を熱くしていたのもあり、私は直感で移籍を決めた。


その直感が、私の落ちに落ちた人生の転機になるなんて、この時は考えてもいなかった…。
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