依存～愛しいキミの手～
桜が満開になった頃、オヤジに話があると和室に呼ばれた。


机を挟み正座して座ると、オヤジがウイスキーをそそいできた。


会話のないままグラスだけ当て飲み始める。


ウイスキーが半分くらいになった頃、オヤジが口を開いた。


｢…治療も終わって時間もたつし、そろそろ行ったらどうだ?」


?


私はオヤジが何のことを言ってるのか全く分からなかった。


オヤジが灰皿を真ん中に置きタバコに火をつける。


あの日から、オヤジはまたタバコを私たちの前でもちょこちょこ吸うようになっていた。


私もグラスを置き、なんとなくタバコに火をつけた。


｢裏切った信用回復してこい」


!!


私はオヤジがママのことを言っているとすぐに分かった。


私もママに会いに行きたかった。


改めてお礼も伝えたかったし、働かせてもらって、治療に掛かったお金やネイルスクールのお金を稼ぎたい。


でも、それをいつ切り出していいのか悩んでいた。


｢本…当に…いいの?」


私が目を見開き言った。


オヤジは優しく笑い頷いた。
< 366 / 441 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop