依存~愛しいキミの手~
翌週、私はそのサロンに見学という形で行ってみた。


サロンは南青山の方にあった。


お店は広くもなく、狭くもなく、白とブルーを基調とした清潔感あるお店。


壁に並んだマニキュアのサンプルが下からライトを浴びすごくきれいだった。


「いらっしゃいませ。あすかちゃん…かな?」


声をかけて来た人は、背が高くスラーッとしたモデルさんのような人だった。綺麗な栗色の胸元まで伸びた髪を揺らしながら、歩いてくる。


「あ、はい。今日はよろしくお願いします」


私が頭を下げると、サロンの中を色々案内してくれてワクワクしていた。


接客の見学もさせてもらい、すごく面白くて、私も早くお客さんにネイルを施術したいと心がうずく。


見学が終わり、スタッフルームに案内され、色々聞かれて面接のようだった…。


「ママのネイル、あすかちゃんがやったんだって?」


ママやキャストの子によく練習台になってもらっていた。


「あ、はい」


「あのネイル見て私気に入ったんだ。働く気があるなら、ぜひ来てもらえないかな?資格はなくても、実力さえあればいい」


私は、ネイルを誉められたことがすごく嬉しかった。


そして、ママに甘えすぎているけれど『運も実力のうち』というイッシーの言葉を思い出し、卒業後働かせてもらうことが決まった。


色んなことが順調すぎて、ある意味怖かった。


幸せの後には大きな落とし穴が待っていると思う気持ちがあったから…。
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