依存~愛しいキミの手~

求めていた物

両手で顔を覆いうずくまって泣く私の頭に、ふわっと何かが優しく乗る…。


それが何なのか見なくても分かった。


また涙が溢れ出す。


ずっと、ずっと望んでいたこと。


今まで、圭介のこの手の感触を忘れたことはなかった。


大好きだった手の感触。


ずっと求めていた優しい手の温もり。


私はボロボロ…と言うより、壊れた蛇口のように勢いよく流れ出る涙を手首で拭う。


圭介の顔をみたいのに、力が入らない。


涙を拭う手で顔を押し上げるように、やっとの思いで顔を上げた。


涙でぼやける視界には、昔と変わらない優しい笑顔が映る。


胸が締め付けられて、上手く呼吸ができない。


「け…」


名前さえ上手く声にならなくて、私は震える手で圭介の腰に抱きついた。


会いたかった、と言葉に一生懸命出そうとしたけど、言葉にならなくて肩を揺らして泣き叫ぶだけだった。


そんな私を圭介は優しく抱きしめて、頭をなでてくれた。


「会いたかった…」


圭介が震える声で言った。


私も会いたかったんだよ。


そう伝えたいのに、やっぱり声にならなくて、圭介をぎゅっと力いっぱい抱きしめた。


やっと会えた…。


やっと触れられた…。


ずっとずっと忘れられなかった温もりに触れることができた…。


ずっと探し続けていた圭介がここにいる、夢でも見ている感覚だった。
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