依存~愛しいキミの手~
圭介の実家に着き、手を引っ張られながら家に上がる。


私は手で流れ出る涙を押さえて歩いた。


「圭介!!お帰り…って誰?お客さん!?」


懐かしいおばちゃんの声が聞こえたけど、顔を上げる余裕なんかなかった。


圭介が螺旋状の階段を登っている途中に


「…あすかだよ」


と、おばちゃんに言ったら、何か驚いて大声で言っていた。


3年半振りに圭介の声で、名前を呼ばれた。


また胸が締め付けられて涙が込み上げる。


こんなに体に水分が入っているのかってくらい、涙は流れ続けた。


部屋に入ると懐かしい匂いがする。


ブルガリの香りじゃなく、圭介の香り…。


涙を手の甲で拭いながら、部屋の中を見渡した。


ダンボール箱がたくさん積み重なっていたけれど、それ以外は昔のままの部屋だった。


「埃っぽいな」


そう言って圭介が窓に向かって歩いて行く。


窓を開ける圭介の背中。


少し背が伸びた?


髪の毛は、茶色くなって髪型も違う。


着ている服も、昔とは変わった流行りの物。


私の中の後ろ姿とは違うのに、懐かしくて抱きしめたくなる愛しい背中。


圭介が振り返り、変わらない優しい笑顔を見せる。


やっぱり好きだよ。


圭介のその優しい笑顔、初めて会った時からずっと好きだよ…。
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