依存~愛しいキミの手~
武田さんは私に仕事をくれるために、わざと飲み干してくれたんだと後日知った。


「お、お酒の濃さはどのくらいにしますか?」


ぎこちない手つきでグラスに氷を入れながら、マニュアル通りの言葉を口にする。


「じゃあ、普通で」


焼酎を指2本分そそぎ、水を入れて、マドラーに手を伸ばした。


マドラーを持つ手が震えている。


うわっ恥ずかしい。


「こういう仕事は全く初めて?」


武田さんが笑って聞いてきた。


「はい。すごい緊張しちゃって…すみません」


クルクルとマドラーでグラスの中をかき混ぜながら言った。


「ふふっ、かわいい。私にもこんな初々しい時代があったのよねぇ」


レイカさんが優しく笑って言った。
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