また、いつか
「こんにちは。君も入院してるの?」
彼女は凛とした声で答えてくれた。この声…昔、何処かで聞いたことがある。
「今はしてないわ。私、もう……あ、ごめんなさい。何でも無いの」
…何だ、今のは?
「私はもう」、何なんだ?
不思議な子だな、と思ったけど、懲りずに僕はまた話し掛けた。その時の僕は、愚かにも程があった。あんな悲しいことを、まさか自ら思い出すなんて。
「そう。…じゃあ、君はどうして此処にいるの?ご家族が入院してるとか…あぁ、ごめん。聞くことじゃないや、こんな…」
「いいの。誰だって初対面の人のことは気になるものだわ」
彼女はまた答えてくれた。少し微笑むと、風に吹かれてさらさらの髪が揺れる。
「…私は、此処から出られないのよ。病院の敷地内から出ると消えてしまうもの」
…今この子は、消えてしまう、と言った?一体どういうことだろう。何かおかしい。この子は何か…
その時、僕は急に思い出した。そうだ。あの時の…この子は、あの子と同一人物?