雪の種
「陽子姉さん…」
陽子。
陽子。
お母さん。
水沢陽子―――。
今、お母さんの名前を呼んだのは叔母さん?
壁にもたれ掛かって耳をすます。
「陽子姉さん、翼ちゃん今日帰ってくるかしら?私がキツく当たりすぎたのかもしれないわ…。でもね姉さん、翼ちゃん女の子なのよ?髪ものばしてシャンプーもリンスもなにもかも翼ちゃんは特別にした。本当はお洋服だってブランド物着たい年頃のはずなのに…。―姉さん、翼ちゃんは今、幸せかしら?姉さん、翼ちゃんのこと天国で見ていてあげてね。翼ちゃんが独り立ちするまで私が母親がわりになれたら翼ちゃん、姉さんが生きていた頃みたいに笑ってくれるかしら?おやすみなさい、陽子姉さん…」