雪の種
手を引かれるままに家のそばの草原。
ここで亮君と出会って辛い思いもして、小羽根のことも聞いて全てここから生まれた。
亮君と出会わなければあたしは外の光を知らない子。
水沢という所のかごの鳥。
空がだんだんと茜色に染まりはじめ小学生が家路を急ぎはじめる。
「じゃあ、また明日な」
「うん、また明日」
夕陽に照らされた頬が蜜柑のような色になる。
草原を自分の家路を行く亮君の影が伸びた。
あたしも立ち上がる。
下を見るとあたしの足とあたしの影がちゃんと繋がっていた。
「…ずっと離れないでよ?」
影にそっと触れる。
そして倍くらいある影と共に香子さんの待つ家に帰った。
「おかえり、翼。新しいお友達はできた?」
台所からひょっこりと顔を出し、手のひらでお肉を固める。
「うーん、微妙かな。前からのお友達。風見亮君だよ」
「……風見?」
香子さんの表情が少し歪んだように思った。
「知ってるの…?」