雪の種
「…いいえ、知らないわ」
そう言って作業を止めていた手をまた再開させる。
…嘘だ。
嘘には慣れっこだからすぐわかる。
「香子さん!?亮君の何を知ってるの…?」
「何にも知らないわ」
「嘘だよね!?亮君の何を…知ってるの?」
嘘、嘘、嘘。
嘘はあたしには通じない。
何でそんな目をしてるの?
それはね、嘘をついてる目なんだよ?
出来上がったご飯を黙々と食べ続ける香子さん。
「風見君とはあまり関わらない方がいいわ。翼のためよ」
何があたしのためなのよ。
言わないで何があたしのためになるの…?
「嫌、教えてよ」
「今は言わない。いつか言うわ。それまで待ってて、あたしは翼が嫌いな訳じゃないの。それだけはわかってちょうだい」
「…………ごちそうさま」