雪の種
あたしのそばにいればきっと亮君は辛い思いをする。
あたしはもう、誰も傷つけたくないの。
誰にも傷ついてほしくないの。
だから、あたしには関わらないで。
あたしも、関わらないから。
「そんな痛みでも、俺は分かち合いたい」
「…なんで?なんであたしに関わろうとするの。あたしはあなたのお荷物なのに」
この5年、あたしはずっと風見亮のお荷物だった。
存在するだけで風見亮を苦しめた。
なのに…、どうして……。
「俺は翼がお荷物だって思ったことは一度もない。
むしろ、俺はずっと桜井翼を探し続けていたんだ。
…本当に傷ついたのは俺じゃない」
どこか切なくて、でも優しくて。
そんな声がする。
その裏は、計り知れない苦しみだろう。
あたしがもし、この世にいなかったら、
亮君を苦しめなくて済んだのに。
傷ついたのは亮君だよ。
紛れもなくあなたなのに…。
桜井翼というお荷物さえ背負わなかったら、
普通の男の子として生きていけたのに。
「あなたとあたしは、
同じ世界を生きていけないの」