雪の種
◇第8章◇ 環境
「そんなことない!翼はここにいるじゃん、それに俺もここにいるよ?」
亮君の手があたしの手に優しく触れる。
その手がとてもとても暖かくて、あたしは声をあげて泣いた。
「明日、いつもの時間に翼ん家前で待ってる」
今日は、暖かい風がスーッと吹いた。
日付が変わり太陽が昇る。
久々に制服に袖を通す。
この感触の懐かしさにほんの少し視界が滲んだ。
戸を引いて久々に外の世界をみた。
まるで初心に戻ったように。
太陽が今日も明るくあたしを照らす。
消えそうだったあたしを照らしてくれる。
庭の葉から水やりの粒が光に反射しながらキラリと落ちた。
朝が、始まった。
左からかけてくる亮君に手を振る。