3番目の高度合成数。-年下のキミと-

・一歩


 月曜日は思いもかけない残業で、ヘトヘトになって家に帰った。

 まさに、ハマった。


 延々とクレームを聞かされたあと、残務処理にも追われ会社を出たのが十九時。


 いくら好きな仕事でも、一時間以上話が続くのはきつい。

 消えてしまったデータを復旧しろ、というご要望はどうしても叶わないので、お客さんが怒るのも無理ないんだけど。


 こういう日は『cube』で休息したかったのに、閉店に間に合わなかった。


 少し遠回りしてお店の前を通り、暗くなった看板を見上げる。


 明日は急遽リナとご飯を食べる約束をしたので『cube』には来れない。


「はぁ……」


 自分でも気が付かずに溜め息が出ていた。


 そう言えば前はそこに大志くんがいたんだよね。そう思って駐輪場を見たけど、今日は誰もいなかった。
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