3番目の高度合成数。-年下のキミと-
マンションの前で、送ってもらったお礼を言った。
「僕が送りたかっただけですから」
大志くんが優しく微笑みながら、前カゴのバッグを取って渡してくれる。
「ありが……」
とう、と受け取ろうとしたその手はバッグを掴むことはなく、逆に、大志くんに掴まれた。
驚きと共に、ドキンドキンと心臓が小さく波打つ。
さっきと違って、今度は真正面にいる大志くん。向き合っているというだけで、緊張してきてしまう。
そ、そもそも、何で手を掴まれてるんだろう……。
視線を手から離せずに固まってしまった。
何となく、顔を見たらいけない気がした。
「実句さん?」
「はい」
「……」
呼ばれても顔を上げれない。返事もなぜか敬語になってしまった。