3番目の高度合成数。-年下のキミと-
「防衛本能かなぁ?」


 ボソリ、と大志くんが呟く。


 防衛本能……?


 少し笑いながら言うその声が、どんな表情から出されているのか見れなかった。


 はい、と今度こそバッグを掴まされる。


 やっと顔を上げると、大志くんは優しく微笑んだままだった。


「僕、頑張ります」


「え? あ、うん。後一日頑張って」


 私の言葉に大志くんがフッと笑った。


 ドキリ、と今度は大きく心臓が跳ねる。


「勉強のことだけじゃなくて、実句さんのことも」


 そう言う大志くんは、"男"の表情だった。 


「あー……、き、今日はありがとう!」


 私はそう言うと、逃げるようにマンションに入った。




 思わず逃げてしまったのは、嫌だったからじゃない。


 迷惑だったんじゃない。



 ただ、どう見ても中途半端な自分が申し訳なかったから……。
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