3番目の高度合成数。-年下のキミと-

 慌てて軒下に逃げ込む人々をぼんやり見ていると、高校生のグループがバタバタと走っている。


 大志くん、傘持ってるかな。

 さっき声が暗かったけど、大丈夫だろうか……。


「実句」


 呼ばれてハッとした。

 一瞬、朋くんのことを忘れていた。

「な、何?」

 何じゃないよ、何のために来たと思ってるの?

 間抜けな自分に呆れてしまう。


「東京本社に戻ることになった。営業から、営業推進部に異動になる」

「そう、なんだ……」


 営業推進部というのは、営業さんたちの仕事を統括する部署だ。

 出世か……。


 喜んであげないといけないのだろうか。


「辞令は来月からだが、もうこっちにいる。今朝、荷物も届いた」


「え……」


 今朝? じゃぁすでに福岡は引き払ったってこと?

 いつものトンボ返りじゃなくて?



 私の中に緊張が走る。

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