3番目の高度合成数。-年下のキミと-


「ポニーテールにしてくれたらいいよ」

 僕がそう言うと、アヤは渋々と頷いた。


「大志の彼女ってみんなポニーテールだよね。なんでそんなに好きなの?」


 やっぱり気が付かれてたか……。


 僕は付き合う子に、髪型をポニーテールにするようお願いしていた。


「最後に好きだった人が、ポニーテールだったから」


 正直に答えると、アヤはしかめっ面をする。

 酷い理由だけど、嘘つく必要ないし、それが嫌なら諦めてくれればいい。


「どんな人だった?」

 アヤが目を伏せながら聞いてくる。


「笑顔が素敵で、優しい人だった」

 僕が即答すると、アヤは僕の顔をうかがうようにチラリと見る。

「まだその人のことが好きとか…?」

「まさか、それはないよ。六年も前の話だし、もう会わない人だから」


 六年も前の話。……そう、最後に好きだった人の顔もハッキリしなくらい年月が経ってしまった。


「ふぅん」

 アヤは少し黙っていたが、やがて僕の手を握り、よろしくね、と呟いた。

 僕もよろしく、と答える。
< 331 / 333 >

この作品をシェア

pagetop