3番目の高度合成数。-年下のキミと-

・灯火


 九月の最後の木曜日、会社を出たところで、朋くんから電話があった。

 久々すぎて、通話ボタンを押すのをちょっと躊躇って(ためらって)しまう。



「はい……」
『俺だけど』
「うん。どうしたの?」

『今、本社の中だ』

「えっ!?」

 私は今出たばかりのビルを見上げた。

 ってか、福岡なんじゃ……?


『明日福岡の会議資料が間に合わないから、急遽(きゅうきょ)俺が受け取りに来たんだ』

 朋くんが出入りするのは階が違うから、出くわさなくても分かるけど……。


「来るって教えてくれればいいのに……」

『急遽だって言ったろ?』


 でも、飛行機乗る前とか、メール打つくらいの時間あるんじゃない?



 ……なんて言えないけど。

< 56 / 333 >

この作品をシェア

pagetop