∫hiRo 〜雨の向こうで僕が思うこと〜
「おまえ、見たところ、まだ半分子供みたいだな。可哀相に」
その男のヒトは、どうやら僕を心配してくれているようだった。
けれど僕は今、そんなに可哀相ではなかった。
みんな“可哀相な僕”に食べ物をくれるし、眠るところだってあった。
そして、何より僕は考え込む事からの解放感で、とても気楽になっていたから。
「おまえオスか。クロ……、クロがいいや! クロ、またメシ持って来てやるからな」
そう言うとそのヒトは、その日は僕の隣に座り、日が沈むまで一緒にいた。
僕には “宗一郎” という名前があったけれど、ここではそのヒトから “クロ” と呼ばれる事にした。
その代わり、僕はそのヒトを “シロ” と呼ぶ事にした。