∫hiRo 〜雨の向こうで僕が思うこと〜
僕には何が何だか分からなかった。
「ショコラ、ただの親子ゲンカなんだろ? 何が駄目なんだい?ニンゲンはそんな事で、どこかに連れて行かれてしまうのかい?」
僕の言葉を聞いたショコラは、本当に悔しそうな顔をした。
「当の親父が警察を呼んだんだよ。それがシロのためだって言ってさ。
シロの母さんはふたりを必死で止めてた。泣きわめいて、そりゃあ可哀相だったよ」
「そんな馬鹿な事……!」
僕はシロの家に走った。
「何 言ってるんだよ……何がシロのためだよ……。
シロは勉強するって張り切ってたんだ。バイトだって毎日頑張って……。
……シロ、何で父さんを殴っちゃったんだよ? シロ……」
僕は全力で走った。
一夜明けたシロの家の辺りは、まるで何もなかったかのように、いつもと変わらない静けさに包まれていた。
けれど、一度だけ訪れた事のあったシロの家に、ヒトの姿はなかった。