【X'mas】百合色をした薔薇の歯車/GIADOOLⅢ
「と、言うより前線兵士がこんなところでウロチョロできるはずもないだろう。」
戦時中。
軍人はよほどのことでもない限り、基地から外に出ることはできない。
厳しい管理下におかれ、行動を制限される。
自由を奪われるのは、何も人工知能となったあいつだけではないのだ。
「それもそうだ・・・ところで、キリトはどうしてここに?」
舞鶴の質問。
「買い物だよ・・・。そっちこそどうしてこんなところに?」
詳しい説明をせず、そんな言葉でまとめて同じような質問を返す。
深く聞かれたくなかったというのもあるが、あまり具体的なことを言いたくはなかったのだ。
「私も似たようなものかな・・・。買い物・・・そして、すこし探し物をね・・・。」
そういう彼女の目線がどこか悲しそうで・・・。
どこか、毎日死にたがっていた彼女を思い出させた。
「探し物?」
「そう。昔の同僚がね。ここに居るかもしれないな・・・って思っただけ・・・。」
どこか遠くを眺めながら深くため息をつく彼女。
おそらく大切な人だったのだろう。
失いたくない人を失い、わずかな可能性を求めて、ここまでやってきたのだろ。
実際、戦場からこのスラムに逃げてくるものは少ないという・・・。