Pirate

完全に海賊達が静まったとき、カタン、と極小さな音がした。

「…そこか」

セドリックは椅子を蹴り上げる。破片と化した椅子のかけらの中に、がたがたと肩を震わせる少年が居た。にやにやと気色の悪い笑みを浮かべる海賊達に怯えながらも、必死に意識を手放すまいとしている。

「残念だったな、少年。……やれ」

刹那、海賊達が少年に襲い掛かる。彼に命乞いする間も与えぬ残酷さは、少年の瞳には余りにも非道に映った。

「やめろ!ちょっと待て、セドリック!」
「……ルツ」

殺気立つ空気の中制止の声を上げたのは、海賊船の副船長である。彼はルツ・F・ブラウン、唯一船長に発言することの出来る権力者。彼が発言したことにより、船には再び静寂が訪れる。

「…お前、何のつもりだ」
「少し調べさせろよ、短気」
「調べてどうする?こんな餓鬼、何の役にも立たない」

ちっちっ、と舌を鳴らし、ルツはセドリックに人差し指を向ける。

「別にいいじゃねぇか。少し面倒を見てやるくらい」
「…ルツ、正気か?」
「当たり前だろ。なんなら俺が引き取る。餓鬼なら餓鬼なりに働かせれば、お前だって人手が足りて嬉しいだろう?」
「俺はこんな餓鬼は船に必要無い」
「お前は無くても俺は有る」

口論ならルツに勝てる者は居ない。それが例え、無敗の海の覇者であっても。

「…勝手にしろ。だが勘違いするな、飯はお前のものを分け与え、仕事はお前以上にやること、俺の命令に従うことが条件だ」
「了解、船長」

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