Pirate
一部始終のやり取りを、この少年はじっと見ていた。海賊達は目を合わせあい、やがて自分の定位置に戻っていく。
「おい少年」
呼ばれればそれはびくりと肩を大きく震わせ、ごめんなさいとしきりに謝る。ルツは微笑み、少年の頭に手を載せる。
「よせよ、俺はお前の味方なんだ」
「…ごめんなさい」
「気にするな。何処から来たんだ?」
「…イタリア、です」
「あぁ、この間積み荷を売りに入った港でこの船に乗ったのか」
成る程、と一人で納得するルツに、慌てて訂正する少年。
「いえ、あの、樽に入っていたのです」
「え?何故?」
「マフィアに追われて」
「…そうか、疲れたろう。お前、名前は?」
「…ジャネット・リンカーソン」
「よし、じゃあジャネット、部屋に行こう。少し休め」
ルツは何処までも親切であった。何故海賊になったのか、その理由は彼だけが知っている。