Pirate

それから暫く、ジャネットはルツの部屋に居た。ルツが居る時には彼に英語を教えて貰い、また彼が居ない時には狭い部屋に無造作に積んである本を読み漁り、熱心に勉強した。彼は努力家であった。
そしてある時、ルツは突然切り出した。

「なぁ、ジャネット。今からお前の仕事は、セドリックのキャビンボーイだ」
「…え、待ってください、そんな」
「あいつは仕事の無い奴や使えない奴は船に乗せない。どんなに信頼度の高い奴でも、仕事が無ければ船から突き落とされて鮫の餌だ。生きるためにはまず、仕事だ」

それを聞いた瞬間、相当なショックを受けたのか、彼は絶句した。ルツは彼に、常に苦手意識を持って接していた相手のキャビンボーイになれ、と言うのである。

「…嫌、か?」
「いえ!そんな…」

沈黙の後、彼は切り出した。

「…是非、やらせていただきます…!」
「本当か!」
「はい、お役に立てないのは嫌ですから」
「ありがとう!ありがとう…!」

そしてこの後、彼はルツも知らぬ重い過去と事実に押し潰されることになるのであった。
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