Pirate
ゴト、と重い音がする。
セドリックはラム酒をぐっと飲み、世界地図をゆっくり眺める。彼は昔から、これがとても好きだった。ゆらゆらと揺れるランプの灯に照らされながら、地球儀を回し酒を飲む。
突然、扉が開いた。
「……入る時はノックをしろ」
「悪い、急用だ。ジャネットの件で」
「…あぁ。あの弱っちいイタリア人か」
「アイツは弱くない。ただ少し、ほんの少しだけ…怖がりなだけだ」
「ふん、いかれた根性してるな」
入ってきたのはルツだった。彼の話は長々と続く。まだ、キャビンボーイになることを話していなかった。
「やめろ、くだらない。出ていけ」
「アイツは悪い奴じゃない」
「お前は奴に情をかけすぎてる」
「お前は情を知らなすぎる!」
「非情。卑劣。極悪非道。それが海賊だ」
「お前だって助けられたこと、有る筈だ」
「俺は弱くない。西洋一の海賊船は、この俺が育て上げる」
「ジャネットに仕事をやってくれ!」
「そんな事をほざきに来たのなら、もうお前は部屋に戻れ」
口論は暫し続く。外で待っているジャネットには、限りなく苦痛な時間であった。