いつかの花火【企】
一人
給料日あとの休日。
これほど買い物が楽しい日はない。
…まぁ、世間から見れば、いい歳した女性が、一人で買い物ってのも寂しく見えるだろうけど…
特に今日はカップルが多い気がする…
花火大会のせいかな?
浴衣を着ている子も多い。
もちろん。
私は花火を見に行く予定があるはずもなく…家から見るつもり。
今日…彼は来るんだろうか?
昨日の夜は珍しく約束してないし…
可愛い顔だし、人懐っこいし、やっぱり彼女とかいるのかな…。
と思いつつ、来るといいな…と思ってる。
色々考えながら、ショーウインドーを眺め歩いていると可愛いグラスが目に入る。
薄い青のグラスに小さな泡がたくさん入っていて、まるで雨の唄が聞こえてきそうなグラス。
仲が良さそうに二つ並んでいる。
…今日の花火用に買っちゃおうかな…?
彼と約束もしていないのになんとなく期待してしまう。
こんなに楽しいのは久しぶりな気がする。
「ありがとうございます。またお越し下さいませ。」
店員さんに見送られ店を出る。
「…買ってしまった。」
悩みに悩んで、やっぱり買ってしまった。
たぶん雨の日に同じことを思っていたのが嬉しかったからかな…。
グラスを見ていたら、あの日の雨の唄が聞こえる気がした。
後は何を買おうかな。
思わず鼻唄が出てしまう。
いつもビールだからワインとかシャンパンもいいな。
つまみじゃなくて、ご飯作ってみようかな。
考え出したら止まらなくなってしまった。