いつかの花火【企】



もともと一人だった。

もう線香花火に願う願い事もないくらい夢も憧れもなかった。
ビールも一人で星を見ながら呑むのが好きだった。

別に…
一人は寂しくなかったし、辛くもなかった。

そう。

そんな一人に戻るだけ。
だから平気。



ちょっと夢を見てただけ。

一本の花火に火をつけたみたいに、ちょっと想いを燃やしただけ。

もう子供じゃないから消えた花火に騒がないだけ。



そう。

もう夢は見ないって決めたのに…。

懐かしく思っただけ。


ただ、それだけ。





ただ、それだけなのに…

どうしてこんなに哀しいの…?




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