いつかの花火【企】

逢わない




花火大会の次の日から帰り道を変えた。

普段は違う道を使ってた。
あの日はコンビニに寄ったからあの道だっただけ。


もちろん屋上へも行ってない。

最初からビールは風呂上がりの家の中が多い。
お気に入りのグラスで飲むのが好き。
グラスは以前から使おうとしていた貰い物の紅いグラスに変えた。


帰宅の時間も遅くした。

…というよりも仕事が増えた。
後は彼に会う日より無理をしなくなっただけ。



全部彼に出逢う前に戻った。
これでいいの。



…彼だって、花火大会の日から家の前にはいない。
屋上にもいる気配はない。
昼休みにも会わない。

きっと私のことなんて、何も思っていないと思う。

もともと連絡先だって知らないし。
聞かれてもいない。
特に約束もない。

たまたま落とし物を拾って。
マンションが同じで。
屋上で出逢っただけ。


彼にとってはきっとそれだけ。


だから…。
もう会わない。

そう決めた。




< 17 / 42 >

この作品をシェア

pagetop