いつかの花火【企】
逢わない
花火大会の次の日から帰り道を変えた。
普段は違う道を使ってた。
あの日はコンビニに寄ったからあの道だっただけ。
もちろん屋上へも行ってない。
最初からビールは風呂上がりの家の中が多い。
お気に入りのグラスで飲むのが好き。
グラスは以前から使おうとしていた貰い物の紅いグラスに変えた。
帰宅の時間も遅くした。
…というよりも仕事が増えた。
後は彼に会う日より無理をしなくなっただけ。
全部彼に出逢う前に戻った。
これでいいの。
…彼だって、花火大会の日から家の前にはいない。
屋上にもいる気配はない。
昼休みにも会わない。
きっと私のことなんて、何も思っていないと思う。
もともと連絡先だって知らないし。
聞かれてもいない。
特に約束もない。
たまたま落とし物を拾って。
マンションが同じで。
屋上で出逢っただけ。
彼にとってはきっとそれだけ。
だから…。
もう会わない。
そう決めた。