いつかの花火【企】
「ありがとうございました。」
店員さんに笑顔で見送られ、コンビニを出る。
手には花火。
…そう。
つい…買ってしまった。
ビールもついでに買っちゃったしな。
マンションの屋上でやろう。
なんだか花火が手にあるだけで、いつもより楽しい気がする。
「…ーさん。」
ん?突然男の子の声がした気が…?
まさかね。
気のせいか。
こんな私に声をかける人なんていないだろうし。
「おねーさんったら。」
「…やっぱり…私なの?」
気になって振り向くと一人こちらを向いている青年がいる。
見たところ…ハタチは過ぎてるくらい?
スーツ姿の可愛い感じのすごくモテそうな爽やかボーイ。
「やっとこっち向いた!」
「あの…なにか?」
「ハイ、これ。落とし物。」
そう言って彼が差し出したのは私の定期。
なんだ…。
落とし物か…。
なんだってなんだ…?
私としたことが。
「あ、ありがとう。」
「どういたしまして。」
ニッコリ笑った彼から定期を受取りカバンにしまう。
変だな…落とした記憶もないんだけどな…
しっかり入れておこう…。
彼はその様子を眺めながら、何か言いたそうな気がする。
お礼が足りないかな…?
「あの…まだ何か?」
「ね、それ花火?一人でやるの?」
「…それが何か?」
「寂しくない?」
ムカッ……。
「拾ってくれてありがとうございました。それでは。」
クルッと後ろを向いて立ち去る。
なんかまだ言ってるけど。
久々に腹が立つ。
一体何なのよ?!
花火への楽しさも半減。
あー!
ムカつく…。
でも、やっぱり一人花火は寂しいもの…?
…なんだよね、どーみても。