いつかの花火【企】



「ありがとうございました。」

店員さんに笑顔で見送られ、コンビニを出る。
手には花火。

…そう。
つい…買ってしまった。

ビールもついでに買っちゃったしな。
マンションの屋上でやろう。
なんだか花火が手にあるだけで、いつもより楽しい気がする。

「…ーさん。」

ん?突然男の子の声がした気が…?
まさかね。
気のせいか。
こんな私に声をかける人なんていないだろうし。

「おねーさんったら。」

「…やっぱり…私なの?」

気になって振り向くと一人こちらを向いている青年がいる。
見たところ…ハタチは過ぎてるくらい?
スーツ姿の可愛い感じのすごくモテそうな爽やかボーイ。

「やっとこっち向いた!」

「あの…なにか?」

「ハイ、これ。落とし物。」

そう言って彼が差し出したのは私の定期。
なんだ…。
落とし物か…。
なんだってなんだ…?
私としたことが。

「あ、ありがとう。」

「どういたしまして。」

ニッコリ笑った彼から定期を受取りカバンにしまう。
変だな…落とした記憶もないんだけどな…
しっかり入れておこう…。

彼はその様子を眺めながら、何か言いたそうな気がする。
お礼が足りないかな…?

「あの…まだ何か?」

「ね、それ花火?一人でやるの?」

「…それが何か?」

「寂しくない?」

ムカッ……。

「拾ってくれてありがとうございました。それでは。」

クルッと後ろを向いて立ち去る。
なんかまだ言ってるけど。
久々に腹が立つ。

一体何なのよ?!

花火への楽しさも半減。
あー!
ムカつく…。

でも、やっぱり一人花火は寂しいもの…?
…なんだよね、どーみても。



< 2 / 42 >

この作品をシェア

pagetop