いつかの花火【企】
「どうしたの?元気ない?」
咲夜が不安そうに聞いてくる。
今日は雨。
ますます気が滅入る。
「ん。何でもないよ。」
「ほんと?」
「うん。」
「ならいいけど…。」
嘘を付いた私の答えに不満そうに引き下がる。
嘘、バレてるかもな…。
お気に入りの薄い青のグラスにビールを注ぐ。
グラスには小さな泡がたくさん入っていて、まるで雨の唄が聞こえてきそう。
まさに雨の日にピッタリのグラス。
「はい。どうぞ。」
「ありがとう。」
まだ私のことを気にしているのか、咲夜はいつになく静か。
いつもなら会社とか友達の話、もしくは質問攻めなのに…。
「…ねぇ咲夜?」
「ん?」
「好き?」
「…!?な、何、突然?」
「…なんとなく。」
「な…?!…言わなくても解るでしょ?」
「解らない。」
「…………。」
あ。
困った顔してる。
この顔を見ると引き下がってしまう。
はじめはストレートだった咲夜だけど、最近は顔を真っ赤にして困ることが多い。
今までは本人に特に意識なくストレートだったみたい。
これが意識されてる証拠といえばそうなんだろうけど…
私も上手く伝えられる方ではないからこんな時は困る。
「ごめん、困らせて。」
「…や。あの…。」
「ううん。いいの。ごめんね。」
何でもないよ。
と笑って見せる。
私の笑顔に安心してか、彼もホッと息を漏らす。
私ったら…『お姉さん』しちゃってるんだろうな…。