いつかの花火【企】
「うん。うまい。」
で、結局ビールを隣で満足げに飲んでいる彼。
なんなんだ、コイツ?
なんか…でも。
人と飲むのは久しぶりだな…。
最近は友達とも飲みに行かないし、実家にも帰ってないし。
人と飲む機会なんてなかったな。
心なしかいつものビールより美味しく感じた。
「ね、花火しないの?」
「ん?しないよ。」
「なんだ。」
「君が言ったんでしょう、一人は寂しいって。だから気が削がれて延期したの。」
「咲夜。」
「へ?」
「君じゃなくて、サクヤ。花が咲くの咲くに夜で咲夜。」
「………。」
名前で呼べと…?
確かに自己紹介もしてなかったけど…
「お姉さんは?」
「…ルイ。涙って書いて涙。」
「ふぅん。」
「ふぅんって…君が聞いたくせに…。」
「咲夜。」
どうしても名前で呼ばせたいのか…。
こだわるなぁ。
「………。気が向いたらね。」
同じマンションと言えど、どうせ会うことなんて今日だけだろうし。
名前なんて呼ぶことないと思う。
覚える必要はないと思うけど。
なんて言ったら煩そうだから、流しておけばいいかしら?
それにしても、こんな夜もあるものなのね…。
不思議な夜だな…。