いつかの花火【企】
「とうちゃーく!」
彼は屋上に着くと嬉しそうにそう言って、コンビニの袋からビールを取り出した。
「はい、涙の。」
彼の差し出したのは私の好きなビール。
…なんで知ってるの?
「ありがと…。」
二人並んでビールを開ける。
なんだか不思議な感じ。
「美味い!」
「…うん。」
確かに美味しい。
一人の時より美味しい…気がする。
「ね、ところで君いくつ?」
「また君って言ったー。名前覚えてよ。」
「解ったからいくつ?」
「24。大学浪人してたから年食っちゃったけど春から社会人。」
「…え…もしかして新卒?」
「そうでーす。涙いくつ?」
「…言わない。」
てか言えないよ。
そりゃ彼の方が若いとは思ってたけど…5つも違うなんて。
しかも新卒なのか……。
なんか新卒ってだけですごく遠い気がする。
「涙は…29?」
「…?!な…なんで知っ…?!」
「知らないけど…カン…?」
「…なっ!!」
カン…?!
こっちはガンッ!!だってば!!
「でも全然涙可愛いし。」
「…は?!」
「あ、そうだ。涙、花火しよ、花火。」
「へ?」
彼はそう言いながら楽しそうにコンビニの袋から花火を出した。
それより今の発言は…?
私の聞き間違い?
と思うくらい動じない彼。
「はい、火付けるよ。下がって下がって。」
「え…、あ、うん。」
固まっている私を押しやって花火に火を付ける。
瞬間。
花火は綺麗に吹き出した。
色とりどりの色が空へ向かっていく。
「綺麗…。」
「うん。」
花火を見てるとなんだか優しくなる。
昔のキラキラした頃に戻って行くみたい。
それから彼は次々に花火を付けていった。