いつかの花火【企】
「締めはやっぱりこれだよね。はい。」
彼が差し出したのは線香花火。
私の一番好きな花火。
「そうね。」
なんだか楽しくなってきて笑いながら受け取ると彼が火を付けてくれた。
「私、昔はお願いごとしながらやってたの…。」
「願いごと…?」
「うん。」
「今はしないの?」
「うーん。今はあんまりないの、願いごと。」
「なんだ。じゃ、俺しとこ!」
無邪気に笑う彼を見てなんだか懐かしい気持ちになる。
「ふふ。そうして。途中で落としちゃダメだよ?」
「あ、笑った!!」
「え?」
「「あ………。」」
彼が騒いだ瞬間、彼の線香花火の火が落ちた。
「あーっ!!涙のせいだ!涙があんなに可愛く笑うから!!」
「…な?!」
「責任取ってよね?」
「し、知らないわよ!」
思わず声が裏返る。
何を言ってるの、彼は!
「責任取って、明日は涙がビールを買ってくること!」
「えぇ?!」
「はい決まり!」
バッチリ笑顔で何も言わせない。
そんな顔で言い切られてしまった…。
でも…なんとなく、明日屋上に来てもいいかも知れない。
花火をしたせいか、そう思った。