キーホルダー
もう何もかもが嫌になってきた。
外はもう暗くて、どこも練習は終わっていた。
だが、和太鼓はまだ練習らしい。
最後の追い上げをしている和太鼓のメンバーは、瞬だけでなく皆が凄かった。
迫力が違う。
「美流?何かあった?」
よほど深刻そうな顔をしていたのか、何人かの友達が寄ってきた。
この子達は、わりと好きだ。
「ん?……あぁ、何でもないよ。」
「そっか。和太鼓凄いよねぇ。将希さ、あの中でリーダーらしいよ?」
美流とその友達は、和太鼓の練習を眺めながら話していた。
「だよねぇ。かっこいい~」
ちょっとテンションの上がった美流は、友達と笑い合う。
「だね。やっと笑った。あんま1人で悩むなよ?」
そう言って彼女は美流の肩を軽く叩いた。
咄嗟に出てきた“かっこいい”という言葉。
それ以来、何度か出てきた。
多分、1人じゃかっこいいという言葉すら言えなかった。
少しずつ、変わり始めてきた。
渚とはやっぱり上手くいかないけど、瞬に会えるこの総合の時間が苦痛ではなくなってきていた。