傷恋(キズコイ)
「離して!もうすぐ純が来るんだから!こんなとこ見られて困るのは先生だよ!」

結衣は私が来て助けてくれると思ってる。
そして今、私はここにいる。

結衣に勇気をもらった気がして、部屋に入ろうと再度ドアノブに手をかけた私を先生の冷たい声が押し止めた。

「こんなところを見ても柏木さんはきっと誰にも、何も言いませんよ。まぁ、多少のショックはあるでしょうけど」

そう言った先生と一瞬視線が交錯した。

その目が邪魔をするなと告げている。

固まって動けない私を顧みる事なく、再び結衣に唇を落としていく。

友達が助けを求めてるのに…飛び込む勇気を先生に粉砕されて、その場にへたり込んでしまった。

動きたいのに動けない。

でも今、結衣を助けないと私はずっと後悔するだろう。

力の入らない足を拳で叩いて何とか立ち上がる。

その時。
室内で本の崩れる音がして、結衣が立ち上がってるのが見えた。

私の助けなしに自力で逃れた結衣と先生が睨み合っている。

そして。
結衣を再び拘束する事を諦めた先生がドアを開いた。

「………!」
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